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医院継承開業のポイント

クリニック継承・開業の成功にむけて、
より交渉を有利に進めるための「4つの秘訣」と、
最低限抑えておくべき「8つの確認事項」をそれぞれご紹介します。

医院譲渡成功に向けて
押さえておきたい4つの秘訣

  • 01 ご相談は「医療に強い」仲介会社へ。

    クリニックの継承は、患者情報の引継ぎや関係⾏政への届出など、医療制度に関する専⾨的な知識が必要になります。

    当社ではこれまでの実績がございますので安心して任せて頂けます。

  • 02 設備よりも「収支」に注目。

    設備面で金額が割安に見えても、設備が陳腐化していたり老朽化している場合、結局は買い替えのコストがかさんでしまいます。

    設備を重視するよりも、これまでの院の収支全体をみた上で継承後の経営が即座に起動に乗りそうかどうかを判断する方が、継承プランにとっては重要だといえます。

  • 03 開業時期とエリアを限定しすぎない。

    通勤のしやすさや立地のブランドなどの要素から、クリニックが多い競争過多の都心エリアで開業を希望する方が多くいらっしゃいますが、開業エリアを限定させ過ぎずに、自身の診療方針と合う盛業クリニックを継承する事で、より早く安定した経営を実現できる可能性が高くなります。

    さらに、開業時期についても「来年の4月までに何としても開院する」などと時期を固定してしまい、条件に合わないクリニックを無理に継承するよりも、時期に幅を持たせて着実な継承を図るほうが結果的に交渉がスムーズになりやすくなります。

  • 04 まずは患者様をしっかりと継承。

    継承開業であれば、ゼロから集患をすることなくスタートから一定の患者来院が見込めますが、前院長時代の患者が全員継続して通院するとは限りません。 患者は立地の利便性が良いため通院しているケースもありますが、人柄や診療スタイルなど前院長との信頼関係のうえで、かかりつけのクリニックとして通院していることも多く、院長交代により一定数の患者減少は見込んでおく必要があります。

    継承開業の場合、患者離れを最小限にするために、前院長から患者に対して後継者を紹介するなど引継ぎ期間を設けて、院長が交代した後も患者が安心して通院できる環境を整えることで患者離れを防ぎます。

継承開業の前に
把握しておきたい 8つの確認事項

法人・個人で異なる譲受スキーム

継承開業においては、継承するクリニックの運営形態が個人事業か医療法人かによって、クリニックの継承スキームは異なります。継承するクリニックが個人事業のクリニックの場合は、譲受する医師個人から譲渡する医師個人へ譲渡資産額に営業権を加えた合計金額を事業譲渡対価として支払います。

一方医療法人の場合は、医療法人が保有する譲渡資産に営業権を加えた合計金額が譲渡価格となり、譲渡対価の支払い方法は、出資持分譲渡と役員退職金2つの方法で譲渡対価を支払うケースが多いです。医療法人が保有する資産のうち、車両や保養所、保険積立金など事業には不要な資産が含まれる場合は、不要資産を予め現金化して退職金として支払う、あるいは退職金の現物支給として清算するケースもあります。

出資持分無しの医療法人はそもそも出資持分がありませんので、医療法人の譲渡資産に営業権を加えた合計金額を退職金として支払います。また出資持分無しの医療法人のうち、基金拠出型医療法人の場合は、基金返還請求権の譲渡と役員退職金の2つの支払い方法により譲渡対価の清算を行うケースもあります。

法人譲渡と事業譲渡の違い

事業譲渡は個人事業のクリニックを継承する場合に限らず、医療法人が運営する複数のクリニックから特定のクリニックを継承する場合や、医療法人は譲渡側の親族が継承し、クリニックのみ事業譲渡にて継承する場合、医療法人の資産負債の整理が困難な場合など、医療法人を除きクリニックだけを事業譲渡により継承することが可能です。医療法人と事業譲渡にはそれぞれ下記のような特徴や違いがあります。

事業譲渡

  • 譲渡対象資産を任意選択することが可能
  • 負債引継ぎが無いため簿外債務リスクが無い
  • 雇用主が変わるため、スタッフの雇用契約引継ぎは無く、スタッフは継続契約する場合は新たに雇用契約を締結する
  • 不動産賃貸借契約、リース契約等の引継は原則行わず、譲受側が相手方当事者と新たに契約を締結する
  • 保健所、厚生局の申請手続きは廃止、新規となる
  • 複数施設を運営する医療法人からクリニックごとに切離して譲渡可能

医療法人譲渡

  • 医療法人が保有する資産及び負債をそのまま引き継ぐ
  • 負債も引き継ぐ為、簿外債務リスクがある
  • 医療法人が雇用主であるため、スタッフの雇用契約は原則引継ぎ
  • 契約当事者は医療法人であるため不動産賃貸借契約、リース契約等の権利義務は引継ぎ
  • 行政手続き等の諸手続きが簡易

開業形態による継承方法の違い

継承するクリニックの開業形態が不動産所有か、あるいはテナント賃貸かによって医院継承の方法は異なります。また譲渡側の医師が不動産を所有している場合においても、不動産所有者が譲渡側医師の個人所有か医療法人所有かによっても継承方法は異なります。それぞれのケースにおいて下記のような継承方法の選択肢が考えられます。

譲渡価格の算出方法

個人事業の場合

クリニック譲渡価格 = 譲渡資産(※1)の時価 + 営業権(※2)の時価

※1
譲渡資産とはクリニックの事業を行ううえで必要な引継ぎ資産のことです。
例)内装、医療機器、什器備品、診療材料など

※2
営業権とは、クリニックの通院患者や地域での信用など目には見えない無形の財産価値のことで、営業権の評価額はクリニックの経営内容により異なります。

医療法人の場合

医療法人譲渡価格 = 法人所有資産(※1)の時価 + 営業権(※2)の時価

※1
法人所有資産の時価評価は、保険積立金や有価証券、不動産など法人所有資産に含み益および含み損がある場合、時価評価額に修正します。また一方で退職引当金、未払い賞与など債務計上されていない簿外債務がある場合はそれらを債務へ計上します。

※2
営業権とは、クリニックの通院患者や地域での信用など目には見えない無形の財産価値のことで、営業権の評価額はクリニックの経営内容により異なります。

継承開業に伴う行政手続き

医院継承に伴う行政手続きは、クリニックの運営形態が個人事業か医療法人かによって異なります。個人事業、医療法人それぞれの運営形態により下記の行政手続きを行う必要があります。また行政手続きは行政書士及び司法書士の有資格に依頼して手続きを行う必要があります。

個人事業

保健所にて
  • 廃止届(前院長)
  • 開設届(新院長)
  • レントゲン廃止届(前院長)
  • レントゲン設置届(新院長)
厚生局にて
  • 保険医療機関廃止届(前院長)
  • 保険医療機関指定申請書(新院長)

医療法人譲渡

各都道府県庁にて
  • 登記事項変更完了届
  • 役員変更届
保健所にて
  • 保険医療機関届出事項変更届
厚生局にて
  • 理事長変更登記申請書

新規開業とのコスト比較

クリニックを継承(M&A)する場合、内装設備をそのまま利用するという前提であれば、医師会入会金を除けば、当座の運転資金(500万円程度)あれば開業できます。ところが、内装設備を改修するとした場合は、内容によっては新規開業時の内装工事よりもコスト高になることがあります。

つまり、スケルトン状態であれば新築工事からスタートしますが、取り壊し費用が発生するのであれば、工事費用はプラスアルファになってしまいます。目安としては坪当たりの取り壊し費用は10万円と見積もっておいて下さい。

医療機器について追加購入の必要がなければ、一定数の患者が付いた状態からのスタートで、トータルコストも抑えられる事業承継(M&A)による開業は、投資予算の観点からはメリットの大きな開業モデルであると言えます。但し、患者については100%の引継ぎは出来ないものと考え、目減りすることを想定した事業計画を立案する様にした方がよいでしょう。

一般的な内科の新規開業例

  • 運転資金 1500万円
  • 内装設備 2000万円
  • 医療機器 1500万円
  • 医師会入会金 400万円
  • 什器備品 500万円
  • その他費用 100万円

合計:6000万円

事業承継による内科の開業例

  • 運転資金 500万円
  • 内装設備の解体 200万円
  • 内装設備の新築 2000万円
  • 医師会入会金 400万円
  • 什器備品 300万円
  • その他費用 100万円

合計:3500万円

※医療機器については追加購入なし

患者離れを防ぐには

患者さんを引き継ぐ以上、前院長の方針をまったく無視することはできませんし、診療方針の急激な変更によってせっかく引き継いだ患者さんが離れていく可能性もあります。

できるだけ譲る側と引き継ぐ側の考えや意向が合致した施設を継承することが好ましく、そのためには継承元の施設の見学や当事者同士の話し合いを綿密に行い、お互いの意に沿った継承条件を決めていくことが求められます。

EXM&Aのサービスでは売却候補の検索段階から、「場所」「金額」「診療科」といった基礎的条件だけでなく、診療・経営方針を含めた総合的な案件サーチを行い、ミスマッチを防ぎスムーズなM&Aが実現するよう最大限配慮を行います。

既存スタッフの引き継ぎ

個人クリニックの場合

個人開設のクリニックは、医院継承の前後で医療法上も税法上も事業主(雇用主)が変わりますので、労働基準法上職員の雇用を引き継ぐ義務はありません。医院継承後も継続勤務を希望する職員がいる場合は、新院長から各職員に対して医院継承後の雇用条件を提示し、双方合意のうえ新たな雇用契約を締結します。

前院長が医院継承の前提条件として職員の雇用引継ぎを希望されるケースもありますので、この場合は職員の雇用を引き継ぐことを前提として商談・交渉を行っていきます。

医療法人の場合

医療法人を継承する場合は、雇用主(事業主)は医療法人のため、職員との労働契約は原則そのまま引き継がれます。医院継承後の給与水準の見直しを図りたい場合は、社会保険労務士と相談のうえ、給与や勤務形態の見直しなど対応を行います。

就業規則や退職金規定の見直しを行う場合は、改定後の規定を職員に説明し、その同意を得たうえで、労働基準監督署に届け出る必要があります。

※ トラブルを避けるには

医院継承後の労務トラブルを避けるためには、雇用を引き継ぐ前に社会保険労務士を入れて、労務リスクの把握、対策、改善を行い、各職員と個別面談を実施し、医院継承後の雇用条件や診療方針、経営方針をしっかりと伝え、労使の相互理解を深めることが大切です。

患者様からの信頼があり、クリニックの勝手知ったるスタッフを引き継げるのは医院継承の最大のメリットの一つであると思います。

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